その日、その日の参加者で決める(『物忘れカフェ』滋賀県)

初期の認知症の人の自主的活動

今回は、滋賀県の藤本クリニックのデイサービス『物忘れカフェ』を訪問しました。守山駅前のビルの中にデイサービスが3つあります。そのうちのひとつが『物忘れカフェ』です。
この日デイサービスに参加していた方は、6名で男性・女性が3名ずつでした。通常は10名の参加があり、皆、初期の認知症と告知を受けています。

デイサービスの内容は、特に決まっておらずその日その日参加者で決めていくそうです。自分たちで何を調理するか決め、買い物に行き調理をしたり、畑で芋を栽培し収穫したり、地域の清掃や、作品展をして地域の人と交流したり、病気や自分たちの気持ちを話し合うなど色々なことをしているということでした。

この日は、私が来るということで、どのように接待するか先週から話し合っていたそうです。しかし、当日朝になると「あてのない旅に出る」と誰かからの提案があり、私が行った頃には、「近江八景には何があるか」という話になっていました。若いスタッフのわからない八景を教えてくれる人、間違ったことを教えてくれる人……なんとか今日行くところが決まり、昼食を兼ねてでかけることになりました。

堅田の落雁(かただのらくがん)である浮御堂(うきみどう)に行き、その後男性グループから「そばを食べたい」という意見が。女性グループも賛成して、そば屋で昼食を摂り、雨なので「帰ろう」という意見でデイサービスにもどってきました。

車中の会話で、Aさん「たぬきそば食べたいわ」Bさん「ともぐいや」と…、とても面白い会話が飛び交っていたので、私が「さすが関西やね、ぼけとつっこみが最高やわ」と言うと、Aさん「いや、ぼけばっかりや」の言葉に大爆笑。ここでは、認知症もユーモアに代わり、笑いで吹き飛ばしていました。

ただ、このような会話がはじめからできたわけではなく、デイサービスに来るまでは、家に閉じこもっていた人もあり、物忘れカフェに来て認知症のことを語ったり、同じ悩みを持つ仲間と過ごすことによって、認知症のある生活に対して積極的に捉えられるようになってきたそうです。

物忘れカフェでは、すべてを本人に決めてもらう中の工夫として、記録を上手に使っていました。皆で話したことをホワイトボードに模造紙を貼って書き込み、今日何をしたか前回何をしたかがわかるようにしていました。それと同時に各自は、B6のノートにその模造紙を写して記憶の手がかりとしていました。模造紙に書いて記録しておき、記憶をつなぐ手がかりとすることは、家族会でも本人の会を自主的に運営していく上で役立つアイデアだと思います。

ひとことで認知症と言っても状態は多様で、早期診断が可能になった昨今、初期の認知症の人たちが自分の気持ちを話し合う場はますます求められています。しかし、介護保険のデイサービスの中で物忘れカフェのような取り組みをしている所は少ない状態です。

告知の有無にかかわらず、認知症の人は、自分の状態に悩み、うつ状態になり家に閉じこもっていると、認知症の状態も進んだように見えます。そのような人は、告知のショック、将来の不安を同じ悩みを持つ仲間に話すことや、いろいろなことに挑戦することで、うつ状態を解消することができます。

初期に認知症の人が自主的に活動できるデイサービスが、増えることが望まれているのではないでしょうか。

認知症を知るキャンペーン 本人の思いを知ろう
呆け老人をかかえる家族の会
本部事務局スタッフ
沖田裕子