本人の思いの表現を助ける(『天神オアシスクラブ』 福岡県)

福岡の天神オアシスクラブを訪問しました。福岡の天神といえば、東京の銀座、大阪の梅田のような昔からの繁華街で、天神の福ビルと言えば知らない人はいないそうです。階下には丸善などのテナントが入っている福ビルの7階に、天神オアシスクラブはありました。

この日デイサービスに参加している方々は、30名余り。女性がほとんどでした。皆さんの第一印象は、おしゃれだということです。福岡の人はおしゃれなのか、おしゃれな人ばかりがここに集まっているのか。天神に行くからということでおしゃれを自然にして来るそうです。
デイサービスの内容も、カルチャーセンターのように本格的な陶芸、はがき絵、生活の書(書道)、音楽サロン(シャンソンや合唱など)、そしてエアロビックスを高齢者・低体力者向けに改良したケアビクスと多彩でした。私もケアビクスに挑戦しましたが、椅子に座ってやっていても汗をかくくらい体を使い、よい運動になりました。

参加している人は、要支援から要介護3くらいまで。送迎がないので家族と来られる人や介護タクシー、ヘルパーの送迎を利用。入浴設備もないので、身体介護の比重が高くなれば、他のデイサービスと併用したり、移られるということでした。
しかし、要支援から要介護3くらいの認知症の人は、身体介護よりも精神的な支援が求められています。そして、認知症の初期から中期の前半はまだまだ本人が自分の気持ちを語る事ができます。天神オアシスクラブの責任者の中島七海さんは、必要に迫られて、本人の話を聴くことになり、今ではその重要性を強く認識されていました。

はじめて本人の気持ちを聴くことになったのは、ひとりの女性がきっかけでした。自分が変わっていく、様々なことができにくくなって行くことで家族に負担をかけることを気にして、本当は関わってほしい家族の関わりを拒否してしまうような行動にでてしまい、そのことで本人がイライラして険しい表情になっていました。中島さんが本人に話を聴くことで、気持ちを表出することができ、本人は変わっていったそうです。また、家族へも本人の気持ちをふまえてアドバイスし、家族も変わっていかれたそうです。そして、2004年の国際アルツハイマー会議で、大勢の前で自分の気持ちを発表された越智さんの話を聴くことなり、語られたことをテープに撮ってはまとめていったそうです。今では、他の方にも自分の気持ちを表出させることが必要と思われる人には、時間をとって一対一で話をしたり、デイサービスのかたわらで話をし、家族に聴いてもらう必要のあるものはテープに撮って渡したり、テープ越こししたものを渡しているそうです。

中島さんが特に本人の話を聴く中で気をつけていることは、「○○ということですか」と言ってしまうと、本人の言葉で表現されなくなってしまうことがあるので、できるだけ本人の言葉が出てくるのを待つようにすることだそうです。
認知症の人は、認知症のために言葉で表現できにくく、また遠慮や複雑な葛藤があり家族には直接言えないことを胸に溜めています。このことは、うつ症状や行動障害として現れてしまうことも多く、家族との関係や介護を難しいものにしてしまいます。家族以外の人が間に入って本人の気持ちを引き出し、本人を精神的に支援するとともに、家族が本人を理解することを助けることが重要です。
本人の声を聴いてくれる専門職がもっと増えるとよいですね。1人ひとりの身近で誰かが思いを聴いてくれることが必要なのです。

認知症を知るキャンペーン 本人の思いを知ろう
呆け老人をかかえる家族の会
本部事務局スタッフ
沖田裕子