助言者派遣

ピアサポートの場の立ち上げ及びフォローアップへの助言者派遣

助言者派遣の申し込みは、これまでの研修修了者及びホームページなどで希望を募った。
助言者は、認知症の人が中心となった「つどい」に関わっている支援者である沖田委員が、本人交流会の企画・運営に対する助言を行った。

派遣日 所属 所在地
2010年12月20日(月) 堺市福祉サービス公社
統括地域包括支援センター
大阪府堺市
2011年1月5日(水) 大牟田市認知症ケア研究会 福岡県大牟田市
2011年1月9日(日) 若年認知症支援の会
愛都(アート)の会
大阪府大阪市
2011年1月14日(金) グループホーム 大阪府大阪市
2011年1月30日(日) 認知症の人と家族の会
広島県支部
広島県広島市
2011年2月14日(月) 玉田山荘ケアプランセンター 大阪府大阪市

イラスト第1回目の派遣は、大阪府堺市で行われている若年性認知症の交流会「フェニックス」に参加して、本人と家族の交流会の交流の方法などについて、助言を行った。

第2回目の派遣は、福岡県大牟田市で1年程前から行っている若年性認知症の交流会「ぼやき・つぶやき・元気になる会」に参加し、助言を行った。(この「ぼやき・つぶやき・元気になる会」の詳細については、報告会の記録を参照)

第3回目の派遣は、若年性認知症支援の会である「愛都の会」の定例会に行われている本人交流会に参加した。愛都の会のサポーターが、本人交流会を行った中に参加し、終了後に助言や意見交換を行った。

第4回目の派遣は、グループホームで4名の入所者の方と助言者が中心になり本人交流会を行い、その後グループホームのスタッフと意見交換を行った。この歳に、1名で助言者派遣の申し込みを行っていた人も参加してもらい、一緒に体験をしてもらった。

第5回目の派遣は、広島県支部の本人交流会等を行っている世話人の集まりに参加し、質疑応答、意見交換を行った。

第6回目の派遣は、大阪府阪南市の特別養護老人ホームに入所している6名の入所者と助言者が中心になり本人交流会を行い、施設職員がサポーターや観察者になった。終了後、職員の質問に答え、意見交換を行った。

第7回は宮城県からの助言者派遣依頼があったが、震災のために中止となった。

第1〜3回目は、若年性認知症の本人たちの集まりであり、本人同士で思いを語ることが大切なことであると再認識された。愛都の会や、広島県支部はこれまでも研修や助言者として複数回訪問しているので、会の中で交流会を主導していけるサポーター(世話人)が育っている。ただ、認知症の進行などによいり、参加者が変わることなどから、継続していく上での悩みがあり、継続した助言が求められていた。

グループホームや特別養護老人ホームの助言では、実際に助言者が入所者と交流会を行うことが求められた。研修で体験していても、自分のところの施設等の入所者で本当に行うことができるのかという疑問があったようだ。入所者が、交流会の場面で普段より話をしたり、はっきりと答えようとする姿勢を見せたことは、職員を驚かせたようであった。1人1人話せないと思わないで、語りかけ交流の場を持つことの重要性が再認識された。

助言者派遣の中での本人交流会の様子(グループホームでの実践例)

A さん 89歳 女性
B さん 104歳 女性
C さん 81歳 女性
D さん 98歳 女性

GH職員 Eさん
他の施設職員 Fさん
(進行:沖田 記録:杉原)

沖田から自己紹介
「Eさんの友人、やっと来ました」
利用者から各自、自己紹介をはじめる
それぞれ、生年月日、名前

  • B 他の利用者に「大正元年生まれ、若いな」
  • 沖田 皆に「元気で長生きの秘訣は?」
  • B 「嫌なものはない」
  • D 「特別ではない、自然に」
  • B 「何も気にせんこと」「何でも食べる」
  • A 「嫌いなものはない」
  • E 「ニンジンは?」とAさんに笑いながら話しかける
  • 沖田 「今まで生きてきた中で何が一番良かったか」
  • B 「お父ちゃんに出会えたことや」「優しかった」
  • A 「何も心配なかったこと」
  • D 「別にないですね」「まあ普通やな」
    「普通にするすると。細かいことは何でもあるからら」と隣に座っているEさんに言う
  • B 「舅、姑がよい人だった」
  • C 「病気しやへんかったこと」
  • B 「明治は私だけ?」
  • 沖田 「つらかったことは」
  • B (頭を指して)「ここがね」
  • D 「逃げとったのかもしれない」「今がいいからつらいことない」
  • 沖田 「頭の調子は最近どうですか」
  • B 「大丈夫、お父さんおかあさんがいい人だった」

Bさん、沖田の記入の用紙をじっと見て「明治、私だけやな」←その後、数回繰り返される
11時の時計がなったので、時計のことが話題に

  • B 「明治、私だけやね、パー、何もわからん」「今も幸せ」「最高」
  • D 「姉は先生やった。私はちょっと小さかった」「うちは学校の先生してたからこわかった」
    成人式の話。紅白饅頭の話
  • B 「今が一番ええなあ」
    正月、お餅の話
  • C 「ふかした芋が好き」
    つりがね饅頭、四天王寺、空襲の話など

《職員と振り返り、意見交換》

Eさん、Fさん、沖田、杉原で感想

  • E 客観的に見れた、感情がぐっと入らなかった
    Bさん、Cさんは願望を言っていた。
    Bさんは入居時「よかった」と言っていたが、年数を重ねると「つらかった」と言えるようになっている。一人でいると「私はどうなっていくの?」と泣いていることもある。今日は表面的にたもっていた。その力は十分あると感じた。職員を前に変なこと言えない、つらいこと言えないと気をつか っていることが感じられた。
    Aさんは、けっこういつもと同じだった。沖田さんと程よい距離感で話しをしていた。Cさん、Bさんが話す時はひいていた。
  • 沖田 Bさんが耳が遠いので、隣に職員がいたらよかった。でもBさん中心で何回も話すことができた。
    お互いのことあまり知らないと思うので、「こういうように言っておられるよ」と橋渡しをすることが大事。自己紹介で各自の力を見たかった。一人ひとりに書いてもらうこともある。この前できていたのに今日はあかんなとわかる。話についてこれるように、やりとりをふる。横のつながりが生きてくるといい。
  • E おやつの時間でも出来そう。会議の時に前にやっていたが、会議の時は限界かと思っていた。
  • 沖田 参加してもらっていることが大事。「いいいです」だけを言ってもらうだけでもいい。
  • F こういう話をもつことがほとんどない。職員の都合で仕事を流してしまう。ルートにのらない。
  • 沖田 話についていけない人、横にいた方がいい。プログラムをというふうに考えないで。
  • E 状況が変わっていく。話さないと話せなくなる。形を変えてでも横のつながり、私たちはどうしたらいいか。
  • 沖田 アルツハイマー病は空間失認で混乱する。脳梗塞の人はできる感はあるのにできないつらさがある。誤認。現実とつながっていた方がよい。Cさんにとっては居心地がいい。
  • E Cさんは入院中「友達がおれへんようになった」と言っていた。今日は「できる」という言葉が多かった。
  • 沖田 今のメンバーで続けられるのではないか。

《杉原さん感想》

助言アドバイスと言ってもいろいろなやり方、受け入れ方があるので、どう総括するのか難しいとは思う。今回は、直接沖田さんが進行をしてEさんが利用者と一緒に交流会に入るという方法だった。Eさんの感想から推測すると、本人交流会の方法を学ぶというよりも、自分以外が司会した交流会に入ることによって、より詳しく利用者の力、心情がわかったということがEさんの学びだったように思う。

直接、交流会の方法を学ぶということではなかったが、交流会を続けたいとEさんが思えたことは大きな収穫だったのではないだろうか。おやつの時間にやりたいとEさんが言っていたので、今後はEさんの方法を見ながら、他の職員にも広がることを期待する。

しかしおやつの時間にできるということなら、グループホームの中でこのような時間を持つということはそんなに困難なことではないとも思える。他の施設と比べると、やりやすい環境にあるのではないか。

にもかかわらず、一般的になぜ実施が広がらないのか。介護現場で働いている人は、本人の気持ちを把握するということを常に念頭においているので、そのためのツールとしてとらえてしまう人が多いのではないか。そのために、交流会を開くことも理想だが、交流会を開かなくても、利用者とのちょっとした会話から把握できているという思いがあるのではないか。
認知症の人同士がつながりあいたい、交流したいという気持ちは、本人になってみないと想像できないことなのだろうか。

《Eさんの感想》

○助言者派遣に期待したことはどのようなことでしたか:

2〜3名の利用者には毎回職場会議に参加してもらっていますが、なかなか声をきっちりひらいその声を生かすことが以前に比べてできていない状況にあります。今回、助言者派遣で場の設定、利用者の今もっている力や声をどうひらい、どう生かすのか、また職員がどう間に入り利用者間のつながり作りをしていくのかのこれからのヒントを学ぶことができればと思いました。

○助言者派遣で実施したことはどのようなことでしたか(助言の内容など):

自己紹介、年齢や誕生日を紙に記入することでその人がもっている力がわかること。
利用者それぞれが現在の状況をわかり続ける環境があって場が成り立つこと。
話をしないとだんだんと話ができなくなること。
外出やイベント等、決める時に利用者がその場にいることに意味があること。
耳の遠い人の横に職員がつくことで場が保てること。
それぞれの利用者がお互いの名前をわかる、知ることで横のつながりがでてくること。
Yさんの認知症の状態から現実とよくつながっておく必要が特にあること。
メンバー構成をみて、ある利用者にポイントをあてることで他利用者が状況把握できること。

○今後、本人交流会を実施していく上で参考になったことやもっと助言してほしかったこと:

この先変化していくとしても続けることで保てる現状があることがわかり、地道にやっていくことの大切さがわかった。
しかし、Cさんに関してはアルツハマー型認知症の病状とは違い変化が早い可能性があり現実とつながっておく必要性がより必要なことや本人の手順の確認に職員がわかるような方法で説明することも必要であるとわかった。またメンバーのバランスを考えることも大切であるとわかった。

○今後、本人交流会をどのように実施していこうと思いますか、残った課題はありますか:

グループホームの暮らしの中で実施していくことを考えると、おやつの時間にできるのではないかと感じた。この季節、寒さから外出するものままならないので皆で交流会をすることもいい時間の過ごし方になるのではないかと思いました。私が体験したことを他職員へどう伝えるのかが私自身の課題であります。