本人ネットワーク支援事業報告会

3)実践発表会

『認知症・本人ネットワークのすすめ』
日時:2011年3月5日(土)13:00〜16:00
場所:京都JA会館

3)実践発表会

(2)地域での交流会報告

司会
それでは地域での交流会について発表をいたします。
発表者についてお知らせがございます。神奈川県の実践発表は西村紀子さんに代わりまして高野静子さんが発表されることになりました。それでは、ここからは沖田裕子委員が進行して参りますので、よろしくお願いします。
沖田裕子
委員
それでは今から具体的に各地でどういうことをされているかということ紹介していただきたいと思います。
まず、宮崎県の生田さんからご発表をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

① 今日も語ろう会

認知症の人と家族の会 宮崎県支部 世話人 生田みい子さん

ただいまご紹介にあずかりました、宮崎県本人交流会「今日も語ろう会」の担当をさせていただいております生田と申します。よろしくお願い致します。地域での交流会ということで、トップバッターなのでとても緊張しております。実は私はパワーポイントを使ってやるのが初めてなので、ちょっとしゃべりばかりに一生懸命になって、話に合わせてスライドがうまく出来るかどうか不安なのですけれど、見苦しい点がありましたらお許し下さい。

今日も語ろう会

  • 日時:毎月1回第2月曜日
  • 場所:小規模多機能ホームよかよか
  • 時間:11:00〜14:00
  • メンバー:6名(男性4名女性2名)参加者は平均5名です

早速ですが始めさせていただきます。名称が「今日も語ろう会」と言います。毎月1回第2月曜日に今は開催しております。場所は通常小規模多機能ホームよかよかという施設の3階でやっております。ここは家族の会の事務所も兼ねております。時間は11時からお昼ごはんを挟んで2時位まで、大体3時間の予定でやっております。メンバーさんは今のところ6名で、男性が4名、女性が2名です。毎回5人位が集まっていただいております。

発足のきっかけなんですけれども、丁度今から2年前の平成21年の2月のことでした。いつもの家族の会の集いに集まって来られたご家族の方が、奥様だったんですけれど、ご主人と一緒に来られていまして、「ちょっと主人が隣に居るとやっぱり気兼ねして思うように語れない」と言って困っていらっしゃいましたので、それでは私が本人さんと一緒に過ごしましょうかと。ちょうどその時は小規模多機能ホームの一室で開かれていたんですが、その部屋を抜け出まして、小規模のご利用者さんが過ごしていらっしゃるお部屋にご案内して、一人で過ごしていらっしゃった方にご紹介をしました。

実はその方は、空想を含めて事実とは違う自分の過去のこととか、人命救助をしたというようなことを繰り返し、繰り返しお話される方だったんですけれど、その方に紹介して糸口をちょっと見つけましたら、いつものように話が展開しまして。本人さんにしましては初めて聞かれる話ですから、とても興味深く嬉々として聞かれて、人命救助のところで反応されまして、「実は私も同じような経験をしたことがあるんだよ」ということで、2人ですごく話が盛り上がったんです。

あっという間に時間が過ぎました。最初すごく緊張されて来られていたんですが、表情がすごくやわらかくなられて、いい表情で。「じゃあ又来ます」と挨拶されて、利用者さんの方も「また会います」と言われて、何かすごくいい感じでした。

私は最初からずっとそばに居て、時々会話の中に加わりながら、表情を見て話を聞いていて、これが本人交流会なんじゃない?と気付いたわけです。この出会いが、私に具体的な行動への勇気を持たせてくれました。翌月本人ネットワーク支援者養成テキストを片手に、とにかくお話が出来るご本人に声をかけてみました。4人くらいの方の参加でということで、第一回目にこぎ着けることができました。初めてなので2時間位がせいぜいかなと思って、2時間を目安に始めたんですが、でも実際のところはとても不安でした。

始めてみますと、口数の少ない方が1人いらっしゃって、表情がすごくさえないんですね。心配しながら進めておりましたら、とうとう1時間が過ぎたころに立ち上がられまして、「私は帰るわ」と言って下に降りて行かれました。やっぱり居心地が悪かったんだなあと思いながら、1時間ちょっとで早めに会を切り上げました。一人の方をご自宅に送る途中の車中で「今度はいつするの」とたづねられて、ちょっと嬉しい手ごたえを感じたのです。

次の日、別の方の奥様からお電話があり「昨日は何があったの?」と言われて。「すごいいい顔で帰ってきて、説明は分からんのやけど、『今日はいがった、今日はいがった』と何回も言ってました・・・。」といって嬉しい電話をいただいたんです。もう本当にそのお声を聞いた時には、何か”やった”という感じがしました。交流会って本人の気持ちを明るく元気にするんだということを、第一回目で手ごたえとして感じることが出来たんです。

交流会には三々五々同伴して来られるんですけれども、会場の設営はしておりません。来られた順に支援と一緒に机を出したりして準備をしております。設営の声をかけているときに、同伴したご家族の方が自然な形で部屋を出て行かれて、本人さんだけが残るような工夫をしておられる方も中にはいらっしゃいます。

丁度2年が経ちました。この2年を表にしてまとめましたので、これを追って説明していきたいと思います。

平成21年3月~平成23年2月(総計19回)

年月日 場所 参加者数 支援員数 その他
H21/3/20 よかよか 4人 2人  
4/29 よかよか 6人 3人  
5/16 よかよか 5人 2人  
6/20 福祉センター 2人 2人  
8/22 市社協 5人 2人  
10/3 フローランテ 7人 3人 フラワー公園
11/25 よかよか 3人 3人  
H22/1/16 市民プラザ 3人 3人  
2/9 よかよか 4人 4人 見学者2人
3/27 古民家 4人 4人 博物館隣
5/10 よかよか 7人 3人  
6/14 よかよか 7人 3人  
7/12 よかよか 6人 3人  
8/9 科学技術館 5人 4人 プラネタリウム見学
9/13 おしゃべりガーデン 5人 4人 レストランで昼食
11/8 よかよか 5人 4人  
12/20 よかよか 4人 4人 お好み焼き
H23/1/17 よかよか 6人 3人  
2/14 よかよか 5人 4人 お好み焼き
    計93人 計61人  

全体で19回ですけれども、最初の5回目までは室内でやりました。6回目は季節は秋で、宮崎市の郊外にあるフローランテという公園に出かけました。9回目は見学者が2人来られました。この見学者は医療のデイケアの職員さんお二人です。10回目が博物館の隣にある古民家で、ちょうど3月末に桜を見に出かけました。14回目が科学技術館のプラネタリウム。リクライニングで、皆で星空を見学いたしました。15回目が、いつもやっている”よかよか”から近くのレストランでお昼ごはんを食べに行きました。ここに17回目と19回目はお好み焼きとあるんですが、17回目のときにすごく好評だったものですから、たて続けにやりました。全体で19回、述べ93人の参加をいただいております。

では、回を追ってスライドと見てください。これは第3回から第5回の手の写真を撮りました。

この写真は最初お顔に配慮して手だけの写真で終わったんですけれども、慣れていかれるうちに、気心が知れてきて普通に写真を撮れるようになりました。

第3回〜第5回の手の写真

第3回〜第5回の手の写真

第6回、公園に出かけました。
この日は”よかよか”に一度集まっていただいて、そこから車で15分位の所に公園があるんですが、車で出かけたんですけれど、後の方に女性のご本人さんが二人でお掛けになられたんです。一人の方がとつとつと日頃の辛さを語り始められたそうです。「本当に出来んことや分からんことが多くなって、主人に迷惑ばっかりかけちょるとよ。のさんがね。」と「のさん」と言う意味は宮崎弁で辛いという意味です。それを聞いて、「あんたもね、私もなんだわ」と言って、二人して泣かれたそうです。前の方で運転をしていた支援員の方も一緒に涙したという話を後で話してくれました。

お二人はその日はずっと離れずに手をつないで、公園を散歩されました。最後に皆でソフトクリームを食べたんですけれど、レストランの端の方のテーブルに二人でお掛けになられて、連絡先を紙に書いて交換されていました。それを私たちは見守っていたんですけれど。後日私が報告を兼ねて、このお二人のご主人にお電話で、それとなくメモのことを聞いてみたんですが、メモはどこにも見あたらなかったそうです。ですけれどこのお二人はこの日、特にいい時間と出会いを持たれたんじゃないかなと確信しています。本人交流会の真髄を見た思いがしました。

第7回目です。「そろそろ会に名前をつけましょうか」と提案しましたら、すぐに「今日も語ろう会がいい」とおっしゃって決まったんですけど、宮崎弁では「語ろうか」というのを「語ろうかい」と言うんです。この「かい」と「会合の会」とかけて考えて下さったんです。今では少しずつこの名前が親しまれつつあります。

第9回は、この日医療の方のデイケアの職員さんが2人いらっしゃって、顔見知りの方もいらっしゃったものですから話がすごく盛り上がりました。この医療の方のデイケアで、本人交流会がもう一つ出来たらなあと期待しているところです。

これは第10回目ですね。10回目は丁度1年前の春なんですけど、桜の花見を兼ねて博物館の奥の方にある古民家を家族も交えて訪ねました。4組のご夫婦が参加されたんですけれど、昔なつかしい囲炉裏があって、ここにボランティアさんがいらっしゃって、昔懐かしい民家にまつわる話とか昔の生活にまつわる話とか、道具の話など色々されて、それぞれの自分の昔を思い出させてもらって、いい時間を持つことができました。ほの暗いんですけれど、赤々と光があって、何とも言えないくつろぎと温かさを感じて癒された一日でした。

お昼が近づいて、ちょうどこの日は桜が九分咲きでした。ブルーシートを敷いてお弁当を広げました。やっぱり外で食べるお弁当は格別で、いい味でした。「来てよかったね」「いいね、いいね」という感じで皆が満足されて「次回も又」とおっしゃいました。丁度今がその時期なんですけれど、今月の末に又ご家族同伴で計画しているところです。

ごらんください。これはこの日、古民家の縁側の柱にもたれて、ご本人さんが見せられた一瞬の表情です。とても哲学的だと思われませんか。私が好きな写真だったので1枚忍ばせてきました。

これは11回目で次が12回目ですね。この時は動物園行きを計画していたんですが、宮崎はこの時口蹄疫で大変だったんです。動物園も閉鎖されて計画は流れてしまいました。このころ宮崎はすべてのイベントが中止になって、季節は初夏だったんですけど、県民皆の行動が抑制されて、室内の本人交流会が14回まで続きます。歌を歌ったりして過ごしました。このころ13、14回の内容としては、特にご夫婦の話が多く語られました。Mさんが、自分の奥さんへの不満をひとしきり話されますと、それに対して女性のご本人さんが、妻の立場から思いの違いを語られるんです。どんどん盛り上がっていきますと、毎回Kさんが「女には口では勝てん!」と言って締めくくられて落ちがつきます。

第15回は科学技術館に行ったんですが、ここでは福祉大の学生さんがお二人、社会福祉士さんの卵だったんですが、参加されました。残念ながらこの回は写真がございません。19回の最後のお好み焼きをご覧ください。この方の笑顔がすごい素敵なんですけれど、支援員が「手を切らんでね」と声をかけてくれたんですが、残念ながらこの後に指をちょっと切ってしまわれた。まだまだ出来る方には働いていただいて、協力しながら皆でしていたんですけれど、この回は反省もしきりでした。配慮が足りなかったなと思っております。

「お茶どうぞ」というこんなシーンもございました。お好み焼きの後は実は焼きそばも食べたんです。これも大好評で、一回目が大変おいしかったものですから、アンコールに応えて、二回立て続けに焼きそばもお好み焼きも食べちゃってこんな具合になったというわけです。

昨年年末に40日間入院され、腹部の手術を3回された方がお元気で1月には顔を見せてくださいました。入院があると皆さんやっぱり心配されますよね、精神面への影響を。私も大変心配したんですけれど、前とお変わりない様子で参加して下さいました。今回「語ろう会は休みますか」と奥様が言われたそうなんですけど、「イヤ、行く」と言って参加されたそうで、「よっぽと楽しいんですね。この会には喜んで『行く』と言うんですよ」と奥様から言われて嬉しい限りでした。

この2年間、病状が悪化して会に参加できなくなられた方がお一人、それから、通所サービス利用の都合で来られなくなられた方がお一人、このお二人が会から抜けられて現在メンバーは6人です。グループホームに勤務している専門職の世話人が、「この会に参加すると自分が癒される」「すごくいい時間だ」と言ってくれております。

認知症に関係なく、参加している皆がいい時間が持てたと感じられることが、交流会を持続する力の元になっているんではないかと私は感じています。人との交流が少なくなられたご本人たちが、この会に出て来られて出会いを持って、交流を深められることで、少しでもお元気を取り戻されるということを、本人交流会の原点としてこれから企画をしていきたいと考えております。 宮崎県支部の本人交流会の報告をこれで終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

沖田裕子
委員
生田さんありがとうございます。口蹄疫とか鳥インフルエンザとか、噴火などで、なかなか大変な中ですが、これからも是非続けていただいて、「今日は良かった」と言われたり、「辛かった」ということをお互いに言われたということが、本人交流会を続けていこうとする原動力になっているということですね。また、これからも続けて下さい。ありがとうございます。
それでは次には、”認知症の人と家族の会”の神奈川県支部の世話人である高野さんから発表をお願いしたいと思います。
② 木曜会