本人・家族が求めるサービスを「ぽれ・ぽれ」(北海道支部釧路地域)

本人の参加が支部の活動の中でどのくらいあるのか、アンケート調査をしたところ、北海道支部の釧路地域で、家族の会がデイサービス『ぽれぽれ』(介護保険ではなくボランティアで)をしていることを知り、参加させてもらいました。

『ぽれぽれ』は、1ヶ月に2回、ボランティアと一緒に食事を作ったりして楽しむ会です。これを始めたきっかけは、若年期認知症のAさんを介護していた娘さんが、なんとかAさんの力をいかして活き活き過ごしてほしいという願いからでした。Aさんは、スーパーでさしみなどを作る仕事をしていたそうですが、計算ができなくなったりして仕事を辞めデイサービスなどに参加していたそうです。しかし、介護保険では限度額があり、なによりも料理というAさんの得意分野が活かされていませんでした。Aさんは仕事を奪われたという気持ちが強くあったようです。

Aさんは、ぽれぽれに来るとお茶を飲んで、自分の仕事と言う感じで買い物に出ていきました。料理や鍋などを洗っている背中は、働き者、働くことが喜びであることを表していました。

この日は、他に3人の女性が参加していました。
Bさんは、「私、すぐ忘れるの」とあっけらかんと明るく語ります。
Cさんは、ここに参加するまで自分の部屋に閉じこもっていたとは思えないくらい、氷川きよしにノリノリでした。でも、食事のし方や椅子への座り方がなかなかわからなくなってきている様子…しかし、誰か介護されてるという感じで関わられると嫌なようです…けれども、男性が勧める食事には不思議と素直に口が開きます。
Dさんは、本日はじめて参加。若年期発症ではないですが、認知症の初期で、どうしても家に閉じこもりがちなのでなんとかしたいと、娘さんと参加していました。

昼食を皆で作って食べた後は、化粧ボランティアの人が彼女たちを見事に変身させ、まわりからの「綺麗だね」「素敵だね」の言葉に、さらに素敵な笑顔がみられました。お化粧もそれぞれの個性がひきたつように、されていたので、より「その人らしさ」が際だっていました。化粧も個性なんだと改めて考えさせられました。

ボランティアの方々は、会員さん4人とナルクから1人、化粧ボランティア3人でした。本当にそれぞれの個性やできること、できないことをよくわかってサポートしていると感じました。いえ、サポートしているというより、仲間として助け合っているといった表現の方が正しいかもしれません。介護する方される方というより、一緒に道を歩いていて、道がわからなくなった人に「私も行くからご一緒に」といった感じです。瓶のふたを開けられないから、開けてあげるだけといった感じです。こんな自然なサポートを専門職にも身につけてもらいたいと思いました。

また、参加していた人は、まだまだ様々な能力の残っていて、すわっていることを主とするデイサービスでは、なじめないだろうと思われました。Dさんは「ここはじっとしていなくていいからいいわ。身体を動かしている方がいい」と言っていました。介護というよりも本人たちのしたいことをできるように手伝っていくような、そんなサービスが求められていると思いました。

いつの時代も、どこでも、家族の会は、家族や本人が求めることをやってきて、それが先駆的なサービスと言われ、制度化されてきたのではないでしょうか…ここにも、新しい形の提示があると思いました。

認知症を知るキャンペーン 本人の思いを知ろう
呆け老人をかかえる家族の会
本部事務局スタッフ
沖田裕子