本人ネットワーク支援事業報告会
2)認知症・本人ネットワーク支援事業これまでの5年間
『認知症・本人ネットワークのすすめ』
日時:2011年3月5日(土)13:00〜16:00
場所:京都JA会館
2)認知症・本人ネットワーク支援事業これまでの5年間
本人ネットワーク支援委員会 委員
大阪市社会福祉情報センタースーパーバイザー
沖田裕子委員より
皆さんこんにちは。今日は本当に日本全国からお集まりいただきまして、今日会場にもご家族だけでなく、認知症のご本人の方もたくさん集まっていただいていることが、何よりもこの事業の成功を示しているのではないかなというふうに思うんですけれども。本人ネットワーク支援事業が、5年間そして5年間を受けて今年やってきたことを少しご紹介させていただこうと思います。
事業目的
- この事業は、認知症の方同士が知り合い、意見交換やお互いの経験の共有ができるように、また、自分たちの思いを社会に伝えるために認知症の方同士がつながっていくための支援を行うことを目的としています。
- 認知症の人と家族の会や認知症介護研究・研修東京センターと連携し、全国各地の家族会やケア関係者の協力を得て、事業をすすめてきました。
この事業の目的を皆さんとおさらいをしてみたいと思うんですけれど。認知症の本人同士が知り合い、意見交換やお互いの経験の共有ができるように、また、自分たちの思いを社会に伝えるために、認知症の方同士が繋がっていくための支援を行うことを目的とするということですね。 こういう発想が生まれたのは、この事業2005年から始まっているのですけれど、2003年にオーストラリアのクリスティーン・ブライデンさんという方が日本に来られて各地で講演をされて、その翌年2004年に京都ここの地で国際アルツハイマー病会議がありましたね。その時に初めて実名を出されて、越智さんが自分の気持ちを発表して下さいました。
そういう流れを受けて、やはりお一人ずつがテレビなんかでお話をされるというようなことだけでなく、本人同士が知り合って、お互いの経験を共有し励ましあっていて、また社会に自分たちはこういうことを求めているんだということのメッセージを伝えていくというようなことが必要ではないかという、ちょうどそういう機運が高まってきたころに、この事業が始まったということになります。
事業1年目(2005年度)

- 認知症の本人の声を聴いて支援やケアに活かしている実践を集めました。
1年目の2005年は、じゃあそういう認知症のご本人の声を聞いて、支援やケアに生かしているというのはどういうところがあるのかなあと。皆さん帰られたら、「だいじょうぶネット」というホームページをご覧になってください。2005年の報告からずっと見ることができますので。
今日はいくつかイラストだけピックアップしてみたんですけれど。この年には、認知症の人と家族の会の支部の方に行かせて頂いたり、介護保険の事業や医療保険の事業で、ご本人の声を聞きながら色々な支援を進めていらっしゃる事業所の方を回らせていただいた実践の報告が書いてあります。今から読んでも、我ながら『古い話ではないな』というか、これからもしご本人の交流会をやっていきたいというような地域や事業者さんがあったら、是非読んでいただけたら参考になることがその中にあるんじゃないかなと思います。またこの2005年のところからクリックすると一個ずつ見れますので、是非ご覧になって下さい。
そして2005年を受けて、2006年に初めてこれも京都で本人会議というのを行いました。認知症のご本人が全国から7人いらっしゃって、今でもこの時に来られた方の何人かは交流が続いていますし、各地で本人の交流会に参加されていたり主体的になさっておられる方達がおられます。
このときに本人会議アピール文というのを出しました。これも今読んでも、昨日改めて読んでも、全然古くないなあという風に思って、よくまとめられているなあと。あの時は夜必死でまとめていたのを思い出すんですけれども。ちょっと読んでみましょう。
本人同士で話し合う場を作りたい
- 仲間と出会い、話したい。助け合って進みたい。
- わたしたちのいろいろな体験を情報交換したい。
- 仲間の役に立ち、はげまし合いたい。
認知症であることをわかってください
- 認知症のために何が起こっているか、どんな気持ちで暮らしているかわかってほしい。
- 認知症を早く診断し、これからのことを一緒にささえてほしい。
- いい薬の開発にお金をかけ、優先度の高い薬が早く必要です。
わたしたちのこころを聴いてください
- わたしはわたしとして生きて行きたい。
- わたしなりの楽しみがある。
- どんな支えが必要か、まずは、わたしたちにきいてほしい。
- 少しの支えがあれば、できることがたくさんあります。
- できないことで、だめだと決めつけないで。
自分たちの意向を施策に反映してほしい
- あたり前に暮らせるサービスを。
- 自分たちの力を活かして働きつづけ、収入を得る機会がほしい。
- 家族を楽にしてほしい。
家族へ
- わたしたちなりに、家族を支えたいことをわかってほしい。
- 家族に感謝していることを伝えたい。
仲間たちへ
- 暗く深刻にならずに、割り切って。ユーモアを持ちましょう。
最後に仲間たちへ、暗く深刻にならずに、割り切って。ユーモアを持ちましょう。この言葉をまだまだ広めていかないといけないんじゃないかなというふうに思います。このアピール文もホームページの方で見ることができますので、是非皆さんご自分で見て噛みしめていただけたらと思います。
そして、事業3年目2007年度には、その前の年は京都で本人会議をして、今度は交流会という形で、京都と鹿児島で本人交流会をしましょうということで、その交流会を京都と少し離れて鹿児島でしました。そういう支援をするための養成も必要じゃないかなということで、モデル地域での本人交流会を実施していって、その次の年2008年度に、その経験を元にテキストやDVDの教材を作ってきました。このDVDとテキストの教材も、DVDの方はこのホームページを開くと、小さい画面ですけれど見ることができますし、もしDVDが欲しい方はお分けしていますので又言っていただけたらと思います。これを作ったことで、この年には全国9ヵ所で支援者の養成研修というのを実施することになりました。
パンフレットも作りまして、このパンフレットのきっかけになったのは、この”手”ですね。これは認知症のご本人の方たちとご家族が手を合わせてこれから頑張ろうと、そういうので写真を撮ったんだよと言ってくださって。あ、これはいいと。
まだまだ自分の顔のお写真を出せないと言われる方が多い中で、手の写真を出せないと言われる方はあまりいらっしゃらないので、これからも皆さん、皆で会ったときに、こういう手の写真を撮ってみるといいんじゃないかなというふうに思うんですけれど。このパンフレットを作って、色んなところで家族の集いや交流会など色々な場所で広めていただけたらなと思っています。パンフレットを見たりホームページを見たりして、「本人交流会の研修はどこでありますか」という問い合わせが今でもあります。
事業の5年目2009年に、富山で泊り込んでの「全国交流会」が始まりました。実は富山ではその前に、本人会議のあった2007の年から、そこで出会った人たちがもう一度出会いたいよということで、同窓会的に集まっていたところを、さらに本人交流会の中で、全国の交流会にしていきましょうということで、これの詳しい状況というのは、又この次に勝田さんが言って下さるので、私の方からは省略をしますけれども、この年から始まったのではなくて、その前から始まっていたのを、更に全国で交流会を作るための勉強の場所とか体験の場所として本人交流会の方で実施していきました。
事業5年目(2009年度)
本人自身からの情報発信や、認知症の人同士のピアサポートを支援する取り組みを広げて、持続可能な条件を整えていくということをこの年の目標にして、またより身近な地域の交流会の実施ができるようになることを目的にしていったんですけれども。それをちょっと分かりやすくまとめてみますと、赤い所が富山で、これは5月と10月に全国交流会をしましたと書いてあります。線が太くなっているところがありますが、京都と神奈川で支援者養成研修をしつつ、午後から実践報告会というのを実施しました。全国でどういうご本人を支える取り組みがあるかということを報告していただきました。
他の7ヵ所は、そこの場所に私と委員長の松本先生が全国行脚をさせていただきまして、そこの地域に出かけて行って本人交流会を始めていったと。それ以前から交流会をなさっておられたところもありますし、行かせていただくことをきっかけにさらに交流会が広がったというところもあります。
皆さん、ぽーれぽーれをとっておられる方は、もれなくこの時のパンフレットのことを覚えておられるかなと思いますけれど、富山でやった交流会の中でご本人たちが会報を作っていったという、どういう風に交流会をやったかということを、写真を交えて報告していただきました。
支援者養成研修
これは支援者養成研修の様子なんですけど、松本先生と私が全国に行って交流会の研修をしていったり、交流会を実際にしていったと。この年に、先ほどのパンフレットにもあったように、皆さんの手の写真を集めて、これもホームページでページを変えるたびに写真が色々変わってくるんですけれど、色々なところの手の写真が出てくる状態になっています。
これは京都でやった時の実践報告会ですね。
九州の方、四国の方、そして関西、富山の発表をしていただきました。
今年、2010年度なんですけど、こういう風に場所を増やしてきたということを、どれくらい増えたかなということで、支援者の方の終了した方にアンケートをしました。皆さん方の中にもアンケートに答えて下さった方がおられるのではないかと思うんですけれども、「本人交流会」というのは、ピアサポート、同じ体験者同士のサポートする場ということで、ピアサポートの場という風に呼んでおりますけれども、認知症の人が中心になったピアサポートの場を全国に広げるために助言者を派遣していくという事業とか、アンケートでどれくらい広がったかというのを確認していきました。
助言者の派遣は6ヶ所。まだ、行っていない場所もありますけれど、これから行くところもあるんですけれども、6ヶ所(震災のため仙台への助言者派遣は中止になりました)行かせていただきまして、これは家族の会の支部のところに行かせて頂いた場合もありますし、新しく取り組みの中で増えたご本人達の交流会の場ですね、今日も大牟田も発表していただきますけれども、そういうところにも行かせていただきましたし、施設特別養護老人ホームやグループホームに行かせていただいて、そこで初めて会った(私が初めて会ったわけですけれども)入居者の方と一緒に交流会をした。認知症の方に話をしていただくのですが、「こんなに認知症の方がお話できるとは思わなかった」というようなご意見もいただきました。
あと本人交流会のアンケートの中で実践をしていただいている方の中で、今日は4つのグループから発表していただくということになっています。研修のアンケートの一部だけ紹介しますけれど。関わっているかいないかというようなことだけ見てみますと、これは全部の件数ではないのですが、研修後関わっているという人が14件、関わっていないという方が25件いらっしゃったんですけれど、その理由は、複数回答ですが、本人交流に関わる時間がない、近隣に本人交流会がない、支援する仲間がいない、認知症の方が集まらないなど、それらのことが上げられていましたけれども、もしからしたら、地域に作るきっかけというのがまだまだないのかなあと。認知症の方が居ないということはないと思うんですけれどね。
研修は役に立ちましたかということについては、交流会の具体的なやり方が学べたとか、色々な形が会っていいと思えて気持ちが楽になったとか、研修を受けた時は大変役立って役だったが、時間の経過とともに関わりが薄くなっているということで、継続した研修を受けられる場を求めておられた。後、継続的な人的なネットワークを作るためにも、本人交流会についての啓発活動や広報が必要なのでは、というそういうご意見をいただきました。
ホームページは、”だいじょうぶねっと”というひらがなを入れていただきますと、まだ見たことがない方、そうするとさっきの写真、ここがページをめくるたびに、またホームに戻ってくると、また変わっています。ブログや掲示板とかありますので、報告書のページもありますので、何年何年と書いてありますので、ここをクリックすると見ることができるようになっています。
交流会のパンフレットとかもダウンロードできるようになっていますので、是非まだ見たことのない方やまだ訪れておられない方はここを見て下さい。掲示板というのもありますので。また今日の報告は短い時間ですので、是非ホームページの方等で見ていただけますし、紙媒体で見たいという方は、また言っていただければ報告書等も送らせていただけると思います。どうもありがとうございました。
- 司会:
- ありがとうございました。それでは続きまして、”本人交流会の実現”と題しまして、実践発表に入りたいと思います。それでは、本人交流会の実現について勝田登志子から報告いたします。